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セントラル空調による感染拡大リスクについて

エアロゾル感染、飛沫核感染、空気感染等どう呼ぼうが、定義が非科学的なのでどうでもいいのですが、一応、定義は、

「飛沫に含まれる水分が乾燥し、大きさが4~5μm未満の飛沫核になると、空中を長く浮遊するようになる。これを吸って感染するのがエアロゾル(飛沫核、空気)感染。」らしいです。

少しでも物理を勉強したことがある方なら、飛沫の中には飛沫核という特殊な領域が存在するのか、大きさが4~5μm未満の飛沫核というものになると急に空気中を浮遊することのなるのかと不思議に思われることでしょう。

少しでも高分子化学を勉強された方なら、ウイルスの細胞膜にはタンパク質が浮いていて、そのたんぱく質には多くの水分子が取り巻いてタンパク質の立体構造を維持するのに寄与しているし、さらにウイルスは粘液に包まれていて、粘液はムチンなどの高分子を多く含みその高分子の周りには水和構造が形成されているはずで、そんなに容易に乾燥するのかなと疑問に思われることでしょう。

 

WHOや日本政府、「専門家」は、新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染の2つとし、エアロゾル感染を頑なに否定してきましたが、換気の悪い密閉空間でクラスターが発生している以上、エアロゾル(飛沫核、空気)感染によると考えた方が素直です。

以下は、

新型コロナウイルスはエアロゾル(飛沫核、空気)感染すること、物に付着したウイルスは日単位で感染力を維持することを示唆する論文です。

Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1.
N Engl J Med. 2020 Mar 17.

によると

空気中(気温21~23℃、相対湿度65%)を漂っているエアロゾル中の新型コロナウイルスの感染力は、半減期 1.09時間で減衰します。

 

これより感染力が1/10になるには、3.62時間かかることになります。

気温21~23℃、相対湿度65%での絶対湿度は、10.1~11.4g/m3で、

この条件ではインフルエンザの場合、感染力が1/10になるのにかかる時間は1時間程度ですので、新型コロナウイルスの方がかなり質が悪いです。

銅、段ボール、ステンレス、プラスチックの表面に付着した新型コロナウイルスの感染力の半減期についても調べられています。以上をまとめると(1/10減衰時間は私の計算です)、

 

半減期(時間)

1/10減衰時間(時間)

エアロゾル

1.09

3.62

0.774

2.57

段ボール

3.46

11.5

ステンレス

5.63

18.7

プラスチック

6.81

22.7

感染力がゼロ(検出限界以下)になるには日単位でかかります。

 

WHOや日本政府、「専門家」がなぜ、エアロゾル(空気、飛沫核)感染を否定してきたかというと、これはあくまでも私的な邪推ですが、クルーズ船での感染拡大の責任を認めたくなかったからかもしれません。エアロゾル(空気、飛沫核)感染するとなるとゾーニングも相当難しくなります。

 

クルーズ船の空調システムに関する論文「大型客船の空調システム設計についての紹介」日本船舶海洋工学学会会誌第17号(平20/3)

をみると、

ダイヤモンドプリンセス号の空調システムはセントラル方式で、各客室に空気が送られ、その後一部は排気され、残りは循環するとのことです。次の図から見ても明らかな通り、一つの客室から出る空気はHEPAフィルターを通すことなく、他の客室にも循環することになります。

ということは、新型コロナウイルスがエアロゾル(飛沫核、空気)感染する場合は、密閉された客室で新型コロナウイルスに感染した人が咳をする度に、客室の空気中にはウイルスが浮遊し、それが空調のダクトを通り他の客室にも流れることになります。

「大型客船の空調システム設計についての紹介」(日本船舶海洋工学学会会誌第17号(平20/3))図2 
「大型客船の空調システム設計についての紹介」(日本船舶海洋工学学会会誌第17号(平20/3))図2

普通のビルでは同じようなセントラル方式の空調システムが採用されていますし、病院でも、感染症病棟でなければ、病室ごとに個別の空調システムは採用されていないでしょう。まして、無症状、軽症者を収容しようとしているビジネスホテルは一般的なセントラル方式の空調システムのはずです。

 

手あたり次第にPCR検査を増やすと、感染者でなくても、PCR検査陽性(偽陽性)になる人が増えていく事を以前説明しました。

そのような方がビジネスホテルに収容されると空調システムを伝って部屋に入ってきたウイルスにより真の感染者になってしまいます。

以上が、私の邪推であることを切に望みます。

下記は、2020年2月度の各社安全衛生委員会でHEPAフィルターについて説明した時の資料です。

 

HEPAフィルターのよる空気清浄

HEPA (High Efficiency Particulate Air)フィルターは、もともと精密機器や半導体の製造工場にあるクリーンルームや、原子力施設の換気装置用として、微細なホコリや放射性微粒子を取り除くために作られたもので、空気清浄機にも搭載されるようになっています。

航空機には、新型インフルエンザやエボラ出血熱の感染予防のため、以前よりHEPAフィルターを搭載した空気循環システムが導入されています。

日本航空web siteより
「機内の空気は、常に機外から新しい空気を取り入れ機内で循環させ、その後、機外へ排出することにより、概ね2〜3分ですべて入れ替わる仕組みになっています。またJALグループで運航するすべてのジェット機には、機内で循環する空気を清潔に保つためのHEPAフィルターを装備しております。」

デルタ航空web siteより
「国際線で使用されるワイドボディ機と、米国内線で使用されているボーイングB737、B757とエアバスA319、A320、A321などのナローボディ機には、最新の空気循環システムを装備しています。このシステムは、高温コンプレッサーとオゾン清浄機で殺菌された新鮮な外気と、工業用のHEPAフィルターでろ過された機内の空気をブレンドするもので、HEPAフィルターは、0.01ミクロンという小さなウイルスでも99.999%以上を抽出します。0.08~0.16マクロメートルサイズの新型コロナウイルスは、HEPAエアフィルターでろ過されます。」

 

北大病院感染対策マニュアルより
「空気清浄化: HEPA フィルター式空気清浄機(以下空気清浄機)を部屋の容積に合わせ使用する。併せて,可能であれば病室の外換気を行う。空気清浄機は1 時間に 6 回以上の換気と同じ能力。」

 

HEPAフィルターを搭載した空気清浄機は、新型コロナウイルスに対しても有効なのではないでしょうか。

仙台医療センターウイルスセンター(センター長 西村秀一先生)主催の
第10回 みちのくウイルス塾
「咳の物理的解析と空中浮遊インフルエンザウイルスの活性」
が圧倒的に勉強になります。空気清浄機の性能評価結果も見れます。

 

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接触8割削減に日本人の社会活動・生活様式に即した具合的な根拠はあるのか?

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マスクは有効です!感染させない、感染しない両方で

「マスクの網目の大きさは10μmもあり、ウイルスの大きさは0.1μmだからマスクをしてもウイルスはマスクを素通りし感染を防止できない」という「専門家」がいらっしゃいますが・・・・・

一般的なマスクである不織布マスクの写真を見てください。

【大阪大学ヘリウムイオン顕微鏡の加工観察事例】 マスクの微粒子除去フィルタのヘリウムイオン顕微鏡観察 ヘリウムイオン顕微鏡(HIM)は、電子顕微鏡(SEM)よりも被写界深度が深く、 奥までピントが合った像を得ることができます。 マスクの微粒子除去フィルタの繊維を観察した例です。

不織布マスクはポリプロピレン繊維でできています。上の顕微鏡写真を見ると確かに10μm程度の穴は空いてます。ただし、繊維には幅があるので、マスク表面の50%以上は繊維で覆われています。ウイルスが繊維を避けて飛ぶ能力があれば別ですが、もし万が一、ウイルスが一個一個飛んできたとしても、半分以上は繊維で防ぐことできるはずです。

さらに、ウイルスの表面はマイナスに帯電しています。ポリプロピレン繊維の表面はプラスに帯電していますので、静電気力により、ウイルスはポリプロピレン繊維に引き付けられます。

ウイルス一個一個が飛んで来てもマスクでそこそこ防御できそうですが、一個一個が飛んで来くることはあり得ないので防御ははるかに容易です。

次は新型コロナウイルス(オレンジ色)のSEM写真です。

新型コロナウイルス(オレンジ色)の電子顕微鏡画像=米国立アレルギー・感染症研究所提供

このようにウイルス同士がくっつき塊となっているので、一個の飛沫に一個のウイルスしか含まれないことなどありえません。多数のウイルスが塊になって数μm大の飛沫にふくまれているはずです。

この飛沫を防げばいいのですから、一般のマスクでも十分対応できます。

 

Yahooニュース(4/19(日) 8:00配信)で、

製紙会社で約30年、不織布の研究に携わり、技術士(繊維部門)の国家資格を持ち、部長研究員である奥恭行氏(58)が、「不織布マスクは3層素材が主流で、中央の細繊維が帯電しウイルスを捕集する。」とおっしゃっているのを見てほっとしました。安全衛生委員会で説明していることは間違っていない!

ということで、大きな気持ちになり叫びます。

正しく使用すれば

一般のマスクでも感染しない&感染させないための対策として有効です

 

[マスク使用時のルール] 

「手洗い前の手指」や「人込みで着用していた後のマスクの外側」にはウイルスが付いている恐れがあります。マスクと顔との隙間からウイルスが入り込んでくることも考えられます。このルールはマスクの内側にウイルスが付かないようにするためです

①マスクを正しく付けましょう。
 ・マスクを着用する前には、石鹸と流水で手を十分洗いましょう。  
 ・マスク着用で重要なポイントとして、不織布マスクの中にある針金を自分
  の鼻の形に合わせて折り曲げ鼻の両脇の隙間をしっかりとふさぐことで
  す。口・鼻が覆われ、頬などに隙間がないようにするのが大切です。
 ・使用中のマスクをあごにかけることはNGです。あごの部分に飛沫が付着し
  ていると、それがマスクの内側についてしまいます。

②マスクを着けている時はマスクを触らないようにしましょう。
 ・人は無意識に1時間に20回以上顔を触っているという調査結果がありま
  す。触らないように意識してください。マスクは直接顔を触らないように
  するためにも有効です。
 ・マスクの位置を調整する時もできれば石鹸と流水で手を十分洗ってからに
  しましょう。

③マスクを外す時は、ゴムやひもをつまんで外しましょう。
  同じマスクを再度着用する場合、マスクの内側には触れないよう注意しまし
 ょう。

④マスクを外した後は、石鹸と流水で手を十分洗いましょう。

⑤マスクを着用している時も鼻呼吸を心がけましょう。
 冷たく乾いた空気を吸うと、気道の免疫力を低下させます。マスクを着用する
 のは、吸う空気を温め、加湿し、気道の免疫力を維持するためでもあります。 

複数の知事が記者会見の時、マスクを無造作に外し、ポケットに入れるのを見ましたが・・・。真似てはいけないですね。

「専門家」の先生方へ
テレビや雑誌等のインタビューに応じる時は高校の数学、理科のレベルで十分ですので復習してからにしてくださいね。

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慶応大学病院 新型コロナ治療目的以外の入院患者でPCR検査陽性率6%の意味②

「慶応大学病院 新型コロナ治療目的以外の入院患者でPCR検査陽性率6%の意味」で

「 4月13日から4月19日の期間に新型コロナウイルスが体内にいた人が6%であり、それ以前にも、多くの人が新型コロナウイルスに感染し、自覚ないまま他の人にうつしてしまい、うつされた人の多くもすでに治っていて、体内にはもうウイルスがいない(抗体ができている)と考える方が素直なのではないでしょうか。」

と申し上げましたが、

PCR検査の感度(感染している人が検査陽性となる割合)は30~70%であることより

実際に感染している人の割合は少なくとも8~9%

と推定されます。

 

まずはその計算についてご説明申し上げますが、ちょっとマニアックです。

期待を込めて(こんなに良いわけないでしょうが)
感度(感染している人が検査陽性となる割合)を0.7(=70%)
特異度(感染してない人が検査陰性となる割合)を0.999(=99.9%)

とします。

とすると、

感染している人が検査陰性となる割合は0.3
感染してない人が検査陰性となる割合は0.001

になります。

本当に感染している人の割合をXとして、慶応大学病院の場合に当てはめると
67人に検査して陽性だったのが4人でしたので、下の表のようになります。

 

感染者67X(人)

非感染者67(1-X)(人)

計(人)

PCR検査陽性

67X×0.7

67(1-X)×0.001

4

PCR検査陰性

67X×0.3

67(1-X)×0.999

63

 

ここで、Xの一次方程式を解いて

上段:67X×0.7+67(1-X)×0.001=4よりX=0.089
下段:67X×0.3+67(1-X)×0.999=63よりX=0.084

となり、実際に感染者している人の割合は8~9%になります。

感度が0.7より低いとさらに感染している人の割合は大きくなります

さらに、

多くの人が新型コロナウイルスに感染し、自覚ないまま他の人にうつしてしまい、うつされた人の多くもすでに治っていて、体内にはもうウイルスがいない(抗体ができている)と考えると、これまでに感染した人の総数は、8~9%よりも大きくなるはずです

 

これまでに感染した人の総数は15%くらいにはなるかもしれませんが、下記のような

さらにマニアックな話になりますので、あらためて投稿します。

ひとりの感染者が平均R人に感染させ、R人の一人一人がさらに平均R人に感染させていくというように感染の連鎖が続いているとした場合、最初の感染者数をAとすると感染者の総数Sは、かなり単純な近似ですが、以下のように表すことができるでしょう。

A+A×R+A×R+・・・・・+A×Rn-3+A×Rn-2+A×Rn-1
=A×(R-1)/(R-1)=S

最初の感染者を第一世代、最初の感染者からうつされたR人を第二世代というように命名して、慶応大学病院で新型コロナ治療目的以外の入院患者に対してPCR検査を実施したのが第n世代のころであったとします。

前の第(n-1)世代の感染者の人の何割が第n世代のころでもウイルスが体内にいるか、第(n-2)世代、第(n-3)世代・・・ではどうかを見積もる必要がありますが、次の世代にウイルスがうつされるのに平均どれくらい日数がかかっているか、感染者が体内からウイルスを追い出すのに平均どれくらいの日数がかかるかを推定する必要あります。

続く

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