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ストレス要因、自殺原因に対する国の統計調査結果より

その前に、平成27年中における自殺の状況-警察庁から年齢階級別の自殺者数をグラフにしてみると下のようになります。

 最も自殺者が多いのは40歳代で、続いて50歳代、60歳代の順になっています。

平成27年中の年齢階級別自殺者数

平成27年中の年齢階級別自殺者数(平成27年中のおける自殺の状況-警察庁)

さらに、原因・動機別で見てみると、健康問題による自殺者数が年齢とともに急増し20歳以降の年代で圧倒的に一番になっています。続いて経済・生活問題、家庭問題、勤務問題の順になり、経済・生活問題による自殺者数は50歳代がピーク家庭問題と勤務問題による自殺者数は40歳代がピークになっています。40歳代、50歳代は、健康上の問題の他いくつもの問題を抱え、メンタル不調に陥っているのではないでしょうか。

平成27年中の原因・動機別自殺者数

平成27年中の原因・動機別自殺者数(平成27年中のおける自殺の状況-警察庁)

それでは、平成27年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況のデータをグラフにしてみます。まずは、強いストレスを感じている年齢階級別割合です。40歳代がピークになっていますが、20、30、40、50歳代の間に大きな違いはありません。

強いストレスを感じている年齢階級別割合

強いストレスを感じている年齢階級別割合(平成27年労働安全衛生調査-厚生労働省)

続いて、抱えているストレスについて相談できると答えた人の割合と実際に相談した相手別の割合です。

ストレスについて相談できる人がいる割合と実際に相談した相手

ストレスについて相談できる人がいる割合と実際に相談した相手(平成27年労働安全衛生調査-厚生労働省)

10代の若者は、会社やプライベートで悩みを打ち明けることができていないのではと思われるかもしれませんが、「強いストレスを感じている年齢階級別割合」から、ほかの年代よりストレスを感じている人が少ないから、相談した人も少ないと考えたほうが良さそうです。従って、上のグラフは「ストレスを感じている年齢階級別割合」でそれぞれの年代の割合を補正する必要があります。その結果が、

ストレスについて実際に相談した相手の割合(相対値)

ストレスについて実際に相談した相手の割合(相対値)(平成27年労働安全衛生調査-厚生労働省)

となります。十代で実際に家族・友人に相談した人の割合を基準にして相対値で表しています。年齢を経るにつれて、悩みを抱えていても相談できる相手がいなくなっているのではないでしょうか。

メンタル不調で産業医面談をするのは、20歳代から40歳代前半の方が多く、45歳後半以降の方は少ないのですが、このデータを見ると、産業医面談を受けるように部下に指示した40歳代後半から50歳代の上司の方がもっと強いストレスを抱えているのではないかと危惧されます。

年齢により、ストレスを感じる対象が変化していきます。若いうちは、会社での人間関係(親と同世代の上司への接し方がわからない、上司の言っていることが納得できない等)や仕事がなかなか覚えられず失敗を繰り返していることが大きなストレス要因となっています。それが30、40と歳を重ねるにつれて、転属、転勤、昇進に伴い会社から要求される仕事の内容・質が変化し、それに適応していくことが大きなストレスになっていくと共に、家庭問題(子育て、家計、介護等をめぐっての揉め事)、自分や親族の健康問題が追い打ちをかけて、ストレス要因は複雑化していきます。プライベートで問題を抱えていると、仕事上のストレスを発散できる場がなくなるため、様々なストレスが絡み合い蓄積しメンタル不調に陥ってしまうのです。

年齢、適性、仕事内容、立場、家庭環境、健康状態等を考慮に入れた広い視野での対応が必要です。「職業性ストレスモデル」だけでは、木しか見ていないことになります。