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感染症予防-インフルエンザ

 

インフルエンザウイルスもノロウイルスと同様に口からウイルスが入って感染します。インフルエンザに罹ったヒトが咳やクシャミをすると細かい無数の唾液、痰が周囲に飛び散ります。その中にインフルエンザウイルスが潜んでいて、周りのヒトが吸い込み感染します。これを飛沫感染といいます。ですので、職場、家庭でインフルエンザを蔓延させないためには、インフルエンザウイルスに罹ったかなと思うヒトは必ずマスクをすることです。罹っていないヒトもインフルエンザが流行している季節はマスクをすることをお勧めします。こまめに手洗い、うがいをすることも有効です。うがいは口の中のウイルスを洗い流すだけでなく、のどの粘膜を刺激し免疫力を高める効果があると言われています。以下に、インフルエンザウイルスの症状、予防及び治療について簡単ですがまとめています。

[症状]

急激な発熱。38度を超えることが多いです。

悪寒、頭痛、関節痛、倦怠感、咳、痰など。

[予防]

インフルエンザワクチン接種:ただし、免疫ができるまで、接種してから3~4週間かかること、接種しても3割強のヒトには十分な免疫ができないこと、数ヶ月で効果がなくなることに留意が必要です。

加湿:空気中を漂うインフルエンザウイルスは、湿度を50%以上にすると死滅します。職場・家庭内の湿度を50%以上に保つことは予防に極めて有効です。

咳エチケット(マスク着用)、手洗い、うがい励行

[治療]

インフルエンザに罹ったかなと思ったら内科を受診して下さい。受診すると、まずインフルエンザ迅速診断キットでインフルエンザに罹っているか診断します。所要時間は10分程度です。インフルエンザ陽性と診断されたら、抗インフルエンザ薬(タミフル、イナビルなど)、症状に応じて解熱剤、咳止めなどが処方されます。インフルエンザに罹っていても症状が出てから12時間以内では、インフルエンザ迅速診断キットで陽性にならないことが多いです。また、症状が出てから48時間以内でなければ抗インフルエンザ薬を服用しても効果がないことにも留意して下さい。インフルエンザに罹ったら、処方された解熱剤を飲み、安静にし、こまめに水分補給をすることが一番の治療です。ただし、ノロウイルス同様、体力のない子供、お年寄りは重篤になる場合がありますので、必ず受診し、医師の指示に従って下さい。

詳細は、

厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」

をご参照下さい。

 

 

感染症予防-ノロウイルス

ノロウイルス感染はほとんどが接触(経口)感染です。ノロウイルスに罹ったヒトの便には1gあたり数億個ものノロウイルスがうごめいています。ノロウイルスは石けんやアルコールではなかなか死なないのですが、トイレの後、手を「流水」で念入りに洗うことでノロウイルスを洗い流すことができます。手洗いを十分しないでいろいろなところをさわり、そこを他のヒトがさわると手にノロウイルスがつきます。手についたノロウイルスは結構しぶとく生き続けますので、手を洗わずに手づかみで何かを食べると口の中にノロウイルスが入り感染します。10~100個のノロウイルスが体内に入っただけで発症する場合があると言われています。

ノロウイルス感染予防に有効なのは、

トイレ後、食前の十分な手洗い

ノロウイルスに罹ったヒトのトイレの後、トイレを次亜塩素酸水で清掃

・床に吐いた場合、ポリ手袋、マスクを装着の上拭き取り、次亜塩素酸水で床を念入りに拭くこと

です。

ノロウイルスに罹った時の症状は、激しい吐き気、下痢、腹痛、37度台の発熱などです。こみ上げてくる腹部の痛みや不快感、吐き気に急に襲われ、何度もトイレに駆け込み吐いたという症状を訴えるヒトが多いです。吐き気に続いて、水のような下痢を繰り返すヒトも多いです。症状はかなり辛いのですが、脱水に注意しこまめに水分を取り、安静にしていると1~2日ほどで症状は治まり、後遺症が残ることはありません。但し、便に血が混じっている場合は、ノロウイルスではない感染症である可能性がありますので内科クリニックを受診して下さい。また、体力がない乳幼児やお年寄りは症状が長引き重症化する恐れがありますので速やかに受診することをお勧めします。

症状が治まった後でも1~2週間は便からノロウイルスが検出されることがあると言われています。ノロウイルスに感染しても症状がでていない(不顕性感染と言います)が、便中にはノロウイルスを認める場合もあります。日頃から、トイレの後や食前には十分な手洗いをお願いします。

感染症予防-麻しん(はしか)

免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症すると言われています。8月末より9月にかけて、関西国際空港で20代後半~30代の男女33人と対応にあたった医師2人に麻しんの集団感染が起きました。空港外へ感染は拡大し、9月21日現在で大阪や兵庫を中心に全国で前年同期比101人増の130人(暫定値)が麻しんを発症しています。

1.麻しんとは

麻しんは麻しんウイルスによる急性感染症です。麻しんの潜伏期(感染後症状がでるまでの期間)は10~12日で症状を時間経過でみると、

カタル期:初期症状は発熱、咳、鼻水、目の充血といった風邪のような症状です。発症後2~3日目に口腔頬粘膜にコプリック斑と呼ばれる周囲に発赤を伴う小斑点が出現します。

発疹期:発症後3~4日目にいったん解熱しますが、再度高熱(39度前後)が出現し、同時に斑状丘疹性発疹が出現します。発疹は耳の後ろや首周りから始まり全身に広がって行きます。

回復期:2~3日高熱が続いたのち、急速に解熱し、発疹も消えていきます。

となります。発症した人が周囲に感染させる期間は、発しんが出現する4日前から発疹出現後4~5日くらいまでです。なお、感染力が最も強いのは発しん出現前の期間です。

発症した約10%の人が肺炎、中耳炎を合併し、0.1%の割合で脳炎が発症すると言われています。

2.麻しん予防

麻しんは感染力が強く手洗い、マスクのみで完全に予防することはできません。麻しんワクチンが有効な予防法です。

麻しんワクチン(主に接種されているのはMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン))を接種することによって、95%以上の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫がつかなかった人にも免疫をつけることができます。さらに、1回の接種で免疫を獲得できた場合でも年を経るにつれて免疫が徐々に低下していく傾向にありますが、2回目のワクチンを受けることで免疫を増強、持続させることができます。2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の幼児の2回接種制度が始まり、2008年度から5年間に限り、中学1年生と高校3年生相当年齢の人に2回目のワクチンが定期接種に導入されています。

3.近年の流行状況

麻しんは毎年春から初夏にかけて流行が見られます。平成19、20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、2回接種制度導入により平成21年以降10~20代前半の患者数は激減しました。患者発生の中心は0~1歳となった一方で、20歳後半以上の成人の割合が増加しています。

かつては小児のうちに麻しんに感染し、自然に免疫を獲得(ほぼ一生涯持続)するのが通常でした。しかし、麻しんワクチンの接種率の上昇で自然に感染する人は少なくなってきています。

ところが平成28年現在20代後半~30代の人たちの中には、今まで1度も麻しんの予防接種を受けていない人、1回しか接種を受けていない人がいます。

さらに、麻しんワクチンの接種率上昇により、周囲で麻しんに懸かる人が激減したため、麻しんウイルスにさらされる機会がほとんどなくなりました。そのため、ワクチンを1回のみ接種していた人は免疫が強化されず、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まって来ている人がいることもが想定されます。

4.妊娠中の麻しん感染によるリスク

妊娠中に麻しんに罹ると流産や早産を起こす可能性があります。妊娠前であれば未接種・未罹患の場合、ワクチン接種について医師に相談することをお勧めしますが、既に妊娠している場合はワクチン接種を受けることが出来ませんので、麻しん流行時には人込みに近づかないようにする等の注意が必要です。また、麻しん流行時に、同居者で麻しんワクチンを2回接種しておらず、病院や学校に勤務している等麻しん患者に接する可能性が高い方がいる場合はその同居者へのワクチン接種等の対応が必要です。

MRワクチンは、妊娠している女性は接種を受けることができません。また、妊娠されていない場合であっても、接種後2カ月程度の避妊が必要です。胎児への影響を出来るだけ避けるためです。また、麻しん単独ワクチン、風しん単独ワクチンの接種についても、妊娠している方は接種を受けることはできません。接種後2カ月程度、妊娠を避けるなど同様の注意が必要です。

5.予防接種の効果と副反応

ワクチン接種後の副反応として最も多く見られるのは発熱(約10%)です。その他、接種後1週間前後に発しんを認める人が数%います。じんま疹や発熱に伴うけいれんもわずかですが報告されています。2回目の接種では接種局所の反応が見られる場合がありますが、発熱、発しんの頻度は極めて低く、稀な副反応として、脳炎・脳症が1人/100万人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係が明らかでない場合も含まれています。

麻しん含有ワクチン製造には、卵そのものを使っていないため卵アレルギーによるアレルギー反応の心配はほとんどないとされています。しかし、重度のアレルギーのある方は、ワクチン中の成分に対しアレルギー反応が起きる可能性もあるので、医師に相談してください。

6.その他ワクチン接種を受けた方が良い人

平成2年4月2日以降に生まれた方は、定期接種として2回の麻しんワクチンを受けることになりますが、それ以前に生まれた方は、1回のワクチン接種のみの場合が多いです。前述のように麻しんに罹るリスクが高い方や流行国(東アジア、東南アジア)に渡航する予定の方、2回目の接種について医師に相談してください。