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ストレスチェック後面接指導

ストレスチェックが義務化されて今年で2年目。当初の思惑では、ストレスチェックを受けた1,000名中、高ストレス者に該当するのが100名程度、面接指導を希望するのが4名程度(割合は全体の0.4%)とのことでしたが。

実際は、

ストレスチェックを請け負っている会社に聞いたところ、面接指導を希望したのは、ストレスチェックを受けた10,000名中4~5名と当初期待された人数の10分の1(全体の0.0数%)にすぎないとのことでした。

一方、

厚労省が平成29年7月26日に発表した「ストレスチェック制度の実施状況」では
・ ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を受けた割合は全体の0.6%
ですので、当初の思惑と同程度からやや多めということになります。

上記ストレスチェックを請け負っている会社の実績との違いはどこにあるのでしょうか。

会社の規模の違いにあります。

大企業の多くは義務化される以前より独自にストレスチェックのシステムを導入しています。ですので、義務化になったからといって新たにストレスチェックを請け負っている会社を探し、そこに委託する必要はありません。新たに委託するのは中小の企業です。

他の従業員の目を気にせず、面接を受けることができるには、フロアーがいくつもある会社でないと難しいかなと感じていますが、

お陰様で、私の方は、ストレスチェックを受けた1,000名当たり面接指導をさせていただいたのは
去年が、11名(全体の1%
今年が今のところ, 12名
となります。今年度はあと数名は面接をさせていただく予定になっています。

ストレスを感じているのは、仕事のこともありますが、家族との揉め事、ご自身やご家族の健康問題・金銭問題と多岐にわたります。ストレスチェックではとてもカバーしきれていないというのが実感です。

 

心の疲れ

タイトルに「心の疲れ」と書きましたが、改めて心が疲れているというのはどういうことで、心の疲れが溜まっているってどういう状態かなと考えてみると???と思う方が結構いらっしゃるのではないでしょうか。

体の疲れでしたら、体がだるくて重くて、特にパソコンと長時間にらめっこしていると目がかすんできたり、首の付け根が痛くなってきてと具体的に思いおこすことができます。ところが心の疲れの方は・・・。

体を動かすにはエネルギーが必要です。食べたものを腸で吸収し、体を構成している組織に送り、酸素で分解(酸化分解)して、その過程で発生するエネルギーを、筋肉を動かすため、食べ物を消化吸収するため、体温を維持するため、傷を癒すため、病原菌から体を守るため等々に使っています。空気中の酸素はそれなりに安定していて消化吸収した化合物となかなか反応してくれないので、ミトコンドリアという細胞小器官で酸素を活性酸素という反応しやすい状態にしています。活性酸素は生命活動を維持するためのエネルギー産生になくてはならないものですが、フリーな状態にしておくと生体分子と手当たり次第に反応し体の機能を損ねてしまいます。遺伝子と反応して、遺伝子変異を起こしてしまう恐れもあります。最近の研究から活性酸素は癌の発生や老化を促進する原因物質とみなされるようになっています。活性酸素をエネルギー産生に必要な最小限の量にとどめ、不要になったらすばやく除去できるようにすることが肝要なのですが、活性酸素の除去にもエネルギーが必要です。

疲労を感じている状態とは、エネルギーが不足し、活性酸素も急増している状態と言えます。これ以上活性酸素が増えないよう、エネルギーを再充填し、活性酸素を除去する余裕を持たせるため、だるくて重いと感じさせ体を休ませようと脳が体全体に指令を出しているのです。日焼けの後、寝ていただけなのに体がだるい、疲れたと感じたことはありませんか。日光中の紫外線が皮膚に活性酸素を発生させているからです。

筋肉痛は乳酸が溜まっているからだと言われていましたが、活性酸素が真犯人であると認識されるようになっています。痛みの信号を脳に送るのはそこに有害な活性酸素が溜まっているからです。乳酸はまだエネルギーを取り出せる有用な化合物です。

心の疲れも、この活性酸素が第一の原因でしょう。

脳は一千数百億個の神経細胞と、その50倍の数のグリア細胞から構成されています。グリア細胞は神経細胞のメンテナンスをする細胞です。脳の重さは全体重の2%にすぎませんが、消費しているエネルギーは体全体の約20%ですので、神経細胞が活発に動いている状態、例えば、明日の朝まで終えてしまわないとまた怒られると眠気と闘いながら報告書を作成している時、成果が出ていないことを責められながら発表している時等々では、神経細胞には、ほかの細胞とは桁違いの活性酸素が発生しているはずです。体が疲れている時と同じように、「だるい!重い!」と感じさせ、脳は脳を休ませようとします。脳の疲れ、心の疲れを回復させるためには、体の疲れよりももっともっと休養が必要になります。けた違いの活性酸素が発生しているからです。そのために睡眠を十分とる必要があるのです。

ところが、疲労を知覚する神経は、他の知覚神経と同様麻痺しやすいようです。「何!この臭い!」と感じてもすぐに臭さは和らぎませんか。嗅覚神経は特に麻痺しやすいです。暑い日に、熱いお湯につかると出た後さっぱりして汗もおさまり気持ちがいいと感じるのは皮膚の温痛覚神経が麻痺したからです。腕を思いっきり叩いてみて、その痛さを感じ、その後腕を43℃以上のお湯につけて、熱さに慣れた!?ところで同じ強さで叩いてみると、あれ痛みが・・・ときょとんとするはずです(お勧めはしません。念のために。)。

5時間しか睡眠時間がとれず、それが2週間続いた場合の集中力の低下具合は、まる2日徹夜したのと同じレベルと言われています。2日徹夜したら朦朧となるはずですが、5時間睡眠を2週間続けた場合のほうはそれほど疲労を感じていないかもしれません。それは麻痺していしまっているからです。脳の疲れ、心の疲れは気が付かないままひどくなってしまっている怖さがあります。

自律神経には、闘うための交感神経と安らぎを与える副交感神経があります。ストレスに対し身構える反応を起こすのが交感神経で、ストレスが長期間続くと、ストレスを感じなくてもいい時でも交感神経が興奮を止めなくなってしまいます。これも麻痺の一種です。そのため寝ようと思ってもなかなか寝付けない、眠れても眠りが深くならず、夜間目が覚めてしまうのです。

疲れていないと思っていても常日頃のケアが必要です。麻痺を解くには緊張の糸をまずは断ち切ることが肝要です。まずは自動的に興奮してしまっている交感神経を鎮めましょう。そのためのfirst stepが

         ゆっくりと腹式呼吸し,筋肉の力を抜くこと

です。疲れを知覚できるようにするために。

 

米国の国家機関が腹式呼吸(横隔膜呼吸)を推奨する下記スマホアプリを配布しています。

    スマホの無料アプリ:Tactical Breather, Breathe2Relax

両方ともby National Center for Telehealth & Technology(米国国防総省所属機関)

 

イラク・アフガン戦争から生還した米国兵士200万のうち、50万人が精神的な傷害(PTSD心的外傷後ストレス障害)を負い、毎年250人超(自殺率は一般人の2倍超)が自殺、自殺者の10倍が自殺未遂しているという現実があります。米国の国家機関がこのスマホアプリを配布している理由です。腹式呼吸(横隔膜呼吸)がストレス軽減に役立つとする多くの研究が欧米ではなされています。